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映画について⑥

母が映画をレンタルするようになったのは、私が高校生の頃からだったと思います。主にレンタルだったのですが、「あなたが寝てる間に」(ジョンタートルトーブ監督作)のVHSだけは購入したようで、家にありました。この作品、サンドラブロックがキュートで、素敵なクリスマス映画なんですよね。母は、映画や海外ドラマ「ER」に夢中になり、映画雑誌のスクリーンが家にある時もありました。

 

私が20代後半の頃、父が亡くなりました。
当然のごとく、母は憔悴。私が母と行動を共にする時間が増えたのも、この頃からです。その後、私は、前述した通りTさんの影響で映画に関心を持ち、母に映画の話をするようになっていきました。喪失感に暮れる母でしたが、ポツポツと映画をレンタル出来るくらいにまで回復していきました。母もハーヴェイカイテルが好きだと知った時は驚きました。

 

そして、どういうきっかけか忘れましたが、「新井浩史さんっていいよね」と2人でよく話すようになったんです。母は豊田利晃監督作「青い春」が大好きでして。母が「新井さん、昨日観た〇〇にも出てたの。ほんとよく出てるね。途中で死んじゃう役だったけど」とさらっと言って、私が「ちょっとー!それまだうち観てないやつー!」と突っ込んで笑い合ったりしていました。

 

2012年12月、新井さん主演の「赤い季節」(能野哲彦監督作)がシアターキノで公開されると知り、思い切って母を誘ってみると、行くと即答でした。それまでは映画館は怖いし疲れそう、と消極的だったのに、いい男のパワーはすごいですね。艶を与えてくれてありがとうですよ。その映画鑑賞で、母は「自分は映画館に行けるんだ」と気付いたようで、観たい作品がある時は、1人で自主的に映画館に赴くようになりました。

 

いつだったか、私が「60歳になったらシニア割引があるから、いつでも安く観れるね」と言うと、母は「うん、早く60歳になりたい」と言いました。私は、父の亡き後、母が後を追ってしまったらどうしよう、という不安に支配され、気の休まらない毎日を過ごしていました。なので、母が、過去ではなく未来に目を向けた発言をしたことにハッとしました。その時は何事もないように振る舞いましたが、1人になってからその言葉を反芻し、よかった、本当によかった、と噛みしめました。

 

母とは今も映画の話をしょっちゅうしていますが、父親とは映画の話はしたことがなかったな、確か映画好きだったはずなのに、と、このブログの文章を考えながら、少し寂しくなりました。お酒を一緒に飲んだことも無かったし。是枝監督作「歩いても歩いても」の「人生はいつもちょっとだけ間に合わない」ってコピーはよく言ったものだよなぁ・・と考えていると、母が昔、「パパは東京の大学に行ってた時、映画監督のお手伝いをしていた」と言っていたことを思い出しました。先ほど母に電話をして聞いてみたら、「あれ?!その監督・・・あれでしょ、あれ撮った人でしょ!!」となったのです。

 

つづく
(なにこのファミリーヒストリー!)