「屋根裏の散歩者」

「屋根裏の散歩者」 窪田将治監督 2016年公開

 

古びた下宿屋。郷田(河合龍之介)と遠藤(渕上泰史)の部屋は隣同士。歯科助手をしている遠藤は、直子(間宮夕貴)という婚約者がありながら、患者の照子(木嶋のりこ)とも関係を持っている。ある日、照子が郷田と遠藤が住む下宿屋に越してきた。

 

 遠藤はのちに直子の父の歯科医院を継ぐ算段であるが、直子との関係で一つうまくいかないことがある。ある過去の影響で、遠藤はサディスティックなセックスでしか欲情しない身体になってしまったのだ。美術学校の学生の照子は遠藤の言いなり。粗野に、暴力的に抱かれている。いつもオドオドしていて、眉間にしわを寄せて許しを請う照子に、遠藤は余計燃えた。一方、直子との情交では、そういった面を解放することが出来ない為、一つになることがままならない。「大丈夫、お疲れなのでしょう」と切ない表情を浮かべる直子を観ながら、果たして、自分の望む交わり方をパートナーに伝え、実行できているカップルはどのくらいいるのだろうと考えた。相手の要望を全て叶えてあげられてると言い切れる人はいるだろうか。今後も関係が続いていく相手よりも、いつ終わるかもわからない、ましてやまだ何も始まってねーよくらいの者へぶつける方が容易いということもあるだろう。大切にしたい人にほど、隠し事をしてしまう。引かれたくないし、嫌われたくないし、悲しませたくない。そういう性質を自覚しているからこそ、まっすぐで正直であろうとする人に、人は寄っていくということもあると思う。そういう体質になってしまった遠藤を、不貞を犯していることを知った上でも、責める気持ちは起きなかった。

 

心ゆくまで愛してもらえない直子の身体はとても綺麗で、あのような胸になりたいと思った。遠藤は眼鏡をかけたまま直子を愛撫していた。ある者が、隠していた牙をむいた瞬間、ざわっとしたと同時に、「いいぞ!そうこなくちゃ!」と気分が高まった。明智小五郎の推理の過程はもう少し丁寧であって欲しいと思ったけど、原作に新たに追加されたエピソードは面白かったし、十分楽しめた。直子役の間宮夕貴さんは、ロマンポルノ「風に濡れた女」でも素敵だった。生命力を感じるセックスシーン、「逃げられると思うなよ」というセリフが記憶に残っている。スタイルはもちろんの事、低めの声が魅力的。12月9日公開の入江監督作「ビジランテ」にも出演するようなのですごく楽しみ。