「不帰の初恋、海老名SA」を読んだ

とにかく一緒にいるのが楽しくて、離れている時、あの人が私より大切に思えるものに出会ったらどうしよう、なんて不安になる恋をしていました。ドライブ中にミスチルの「youthful days」が流れると、「ねぇねぇ!サボテンが赤い花をつけたからうちにおいでよ!」と運転席の彼にはしゃいで言うのがお約束でした。その私の勢いに、怖いよーといった感じで泣きそうな顔をする彼を見るのが好きでした。

そんな風にはしゃいでいたかと思えば、急にすねたり、素直になれなくて意地を張って後に引けなくなったり。諸々、全開でした。恋人同士ではあったけど、ものすごく仲の良い友達のようでもありました。私は、その人が誰かとキスをしたりセックスをするよりも、手をつないでゆったりと落ち着いた時間を過ごすのを想像する方が辛い、というような事をその人に言った記憶があります。

すごく大切に思いながらも、あぁこの人と結婚する人はいいなぁ、と向かい合わせで食事をしている時に、相手の顔を見ながらよく考えていました。付き合っているのは自分なのに、別れる予定も今のところない状況で、そんな事を考えていました。最後は私が他の人に惹かれ、別れました。あの頃、「〇〇」っていう名前の車がいつか発売すると思う、と私はよく予想していて、それに対してその人が寸評を言うというやり取りをよくしていました。最終的に絞られた2つの案。新車のCMを見る度、あぁ惜しい!とか、でも多分いつか出るよ、と密かに思っています。それをその人が全く覚えていなかったとしても、全然いいもん。大丈夫。

 

坂元裕二著「往復書簡 初恋と不倫」の中の、「不帰の初恋、海老名SA」を読んで思った事です。