愛犬へ報告

5人で飲んだ帰りの地下鉄。

男性・女性・その人・私・男性の並び。向かいの座席には誰も座っていないから、ガラスには5人が映っている。それを視界の端っこで捉えて、すぐに目をそらした。本当はガラスに映ったその人を見たかったのだけど、もし目が合ったらどういう顔をしていいかわからないから、一度もガラスを見れなかった。

 

次の日、映画と夜の予定の間の2時間、その人と会った。パターソンを観ながら、映画が終わって下に降りたらその人がいるんだと思ったら、手に汗が滲んだ。まだまだこんな気持ちになれるんだ。階段を降りながら、いい匂いのするハンドクリームを塗った。横を歩いていると顔を見なくていいし、こちらも見られなくて済むからちょうどいい。いい子な振りをすることもなく、いつも通りでいられた。また会いたいと思った。

 

どうなりたいのかは自分でもわからない。好かれたいのか、身体を重ねたいのか、付き合いたいのか。なんだか、どれも違うような気がする。愛犬に、好きな人が出来たよ、と報告をした。愛犬は今日もとびきり可愛い。