「秋日和」の感想

※結末には触れてません。

 

小津安二郎監督作「秋日和」を観た。

友人の七回忌に集まった男性三人。彼らは、友人が遺した一人娘アヤ子の結婚のお世話をしようと盛り上がる。しかし、当のアヤ子は母秋子を一人にしてしまうのが気がかりでその気になれない。男性らはまず秋子を再婚させるのが先決だと矛先を変えるが・・・

 

1960年の映画。面白かったー。痛快なおせっかいエンターテイメント。周りがどんどん盛り上がっちゃって、本人たちは置いてきぼり。「そっとしておこう」という概念がない。おいおい・・と思わなくもないが、男性らは、ただただアヤ子に幸せになってもらいたくて、きっとそれが秋子の願いなのだと信じて疑わないから、呆れながらも、おかしみを持って観る事が出来た。

 

伝えるのが遅れたが、秋子もアヤ子もとても美人さんである。男性三人は、秋子とアヤ子だったらどっちがいいか、なんてスケベ臭い事を言うし、飲み屋の従業員の女性を揶揄するような話題で盛り上がるくだりは、スリッパでパン!パン!パーン!と頭を叩いて回りたくなった。でもわかるよ。秋子もアヤ子もいいよ。品があるし、絶対に瞳孔開いて下ネタに食いついてこないさ。「やだ、もう。そんな話ばかりでしたら、もう私たち帰りますよ」とか言っちゃうんだよ。そこがいい!男性と秋子が二人でうな重を食べるんだけど、妙にやらしかったな。向かい合って二人でうな重。店の外の「う」という看板がなまめかしく見えた。

 

結婚については、徐々に自主性を重んじる時代に変わってきたと思うんだけど、こういうおせっかいな人達が沢山の人の背中を押してきたのも事実だったんだろうな。忘れてはならない人物、アヤ子の同僚の百合子。彼女が取る突飛な行動も、全部相手を思う心からきているし、彼女の功績はとても大きい。今は、自分の行動が余計なお世話なんじゃないかって考えすぎてしまう時代なのかもしれないな。

 

この映画は、おせっかいボーイズの過剰な愛の他に、母から娘へ、娘から母への愛情が描かれている。観ながら、どうしたって母の切なげに笑う顔が浮かんだ。そして、元旦那さんのお母さんの事も思い出した。先日、お母さんに今の彼と一緒に住む事を伝えると、おめでとうという言葉の次に、「何かお嫁に出すような気持ちでさびしくて涙が出てきました」と書いてあった。私の目も潤み、文字が柔らかくゆがんだ。

 

しのちゃん、「色々言いたいことはありますがとりあえずおすすめしときます!笑」という面白いおすすめの仕方をしてくれてありがとう。とても面白かった。私もラシャもマッセもわからんよ。