ドライブ願望と「アートスクール・コンフィデンシャル」

まだ見ぬ好きな人とドライブに行きたい。コンビニに飲み物買いに寄って、そのついでにおやつ買ったり。ドライブスルーして、車運転しながら食べるつもりだったんだけど、公園の横に停めて食べたり。ソフトクリーム食べたり、温泉寄ったり、帰り道、もう少し一緒にいたくて赤信号が嬉しかったり。なんでもないことがスペシャルに思えるから、恋はいい。それが日常になって、ありふれた時間になったとしても。

 

今日はDVDで、テリー・ツワイゴフ監督作「アートスクール・コンフィデンシャル」を観た。美術学校に入学したジェローム。そこでヌードモデルをしていたオードリーに一目ぼれ。自分の才能を周りに認められたいし、オードリーにも好かれたい。でも、周りからは痛烈なダメ出しを受けるし、オードリーは才能を評価されているジョナと仲良くなっていくしで、中々うまくいかない日々。そんなストーリー。恋の結末や美術家としての未来については全く触れないので、読んでもらえたら嬉しいです。

 

この映画、劇的なことが起こるわけではないんだけど、会話が気が利いていて、登場人物のキャラがみな立っていて面白かった。会話で印象的だったのは、同級生の展覧会での話。オードリーが映った写真を見つめるジェローム。その時はまだオードリーのデッサンはしたけど会話は交わしていない。その写真を撮った同級生に、「知り合い?名前とか知ってる?」と聞いてしまい、その女性から「私の写真の事はまるで関係ないわけ?」とキレられる。これ、結構やってしまいそうなミステイクじゃないですか?撮った方からしたら、一言でも写真についての感想を欲しいとこですよね。そこ素通りかい!っていう。

 

また、オードリーのお父さんは美術作家なのですが、その二人の会話もまたいいんですよ。

「小品が2つ売れた。お前の嫌いなのがね」

「嫌いじゃないわ。別の方が好きなだけ」

これもあるあるというか、片っぽ褒めたからって、片っぽけなしたわけじゃないですよ、ってやつ。こういう微妙なとこ突いてくるのがこの作品の面白さ。同級生も癖のある人が多くてね、ツボだったのは、講師に取り入る生徒。講師の似顔絵を課題で取り上げたり、コスプレのパーティでは別の講師の髪形を真似したり。

 

それと、いいなぁと思ったのは、ジェロームは講師や卒業生のおじさんに素直に悩みを打ち明けるんですよね。大人の言うことなんて、って斜めの態度を取らずに、きちんと頼るんです。ある講師は、「(ジョナの作るものは)魅力的には違いないが、だからといって彼が君より優れているわけではまるでない」と言います。これ、ほんとその通りなんですよね。でもつい比べて、あぁ自分はほんとに最低で何も持たない人間だ、なんて考えてしまう。芸術史の講師に、「ある人に・・・彼女に(オードリー)に認めて欲しい・・」と恋をしている事を伝えると、その講師の女性はとーーっても嬉しそうな顔をするの。だから作品を見て意見を、と請うジェロームに、「ダメよ、でも応援してるわ」と伝える。恋をしている若い人を見ると私もウキウキするし、心から応援したくなる。その先に苦みが待っていようとも、素晴らしいことだもん。ただ、おいおいジェローム、それはちょっと違うのでは、と思ったのは、「最終評価に傑作を出せたら、彼女(オードリー)はジョナなんか忘れる」と言っていた事。自分に自信はつくだろうけど、オードリーの恋愛感情がそれに左右されるかっていうとそれはまた別の話だろうに。そんな風にごっちゃにしてしまう気持ちもわからないでもないけど。

 

あー長くなってしまった。卒業生の年配のおじさんがジェロームに言う、「この世を楽しいと思えるヒント」がすごく良くてね、そのセリフと結末は観た人へのお楽しみってことで。さぁ、外走ってきます。