肉の行方

裸足の季節になった。

 

朝職場に着くと、まずパソコンを立ち上げる。パスワード、職場だと指が自然に動くけど、家だと全く思い出せない。ブラインドを上げ、窓を開け、網戸を閉める。汗拭きシートで首筋と胸元と脇を拭く。ポットに水を注いでいる間に立ったままヨーグルトを食べる。これが私の朝食。

 

今日の仕事帰り、職場で戴いた大福を母の元に届けた。部屋には、レンタルDVDや図書館で借りた本があった。お蕎麦を茹でてくれて、一緒に食べた。万能ネギと油揚げ、冷凍しておくと便利だね、と言っていた。お味噌汁を最近よく作っているらしい。親戚から送られてきたという変な服を私に見せてくれ、何枚か着てみた。緊張感の無い、油断しすぎなボディラインに鏡の前で呆れた。美意識が足りない。海底にいるのにシャワーを浴びたいと言ったしずかちゃんを見習いたい。食費を安く済まそうとすると太る。痩せたい時ほど食べたい。肉は胸に付かずお腹につく。

 

母はよく笑うようになった。過去20年を遡ってみても、こんなに調子のいい季節は無かったかもしれない。DVD観れているうちは大丈夫、出掛けれているうちは大丈夫、ご飯食べれているうちは大丈夫、寝れているうちは大丈夫。そう胸の中で唱えて、自分を落ち着かせていた。

母と愛犬がいなくなったら消えてしまいたくなるかもと考える時、両親にも兄弟にも夫にも先立たれた母の姿がきまって頭をよぎる。なんだかんだでタフなんだ。母も私も。

 

今日も静かな夜。